いわむらトピックス

【報告】空き家利活用実践ワークショップ第2弾

梅雨が明け、夏の暑さが本格的となった7月27日(日)、2回目となる空き家利活用実践ワークショップを開催しました。

今回の会場となった町家は、空き家となって不動産業者に出ていたところを、「自分が買って守りたい」という意志で今の家主さんが購入されたもの。

もともと表具屋さんだった家主さんがご自身で、一階の表部分を改修、今では週末などにレンタルスペースとして貸し出し、ちょっとしたお店やギャラリーに、その一つ奥の座敷を事務所として貸し出すなど、積極的な活用をされています。

今回の改修計画は、2階部分を将来的に遠方から出店しに来た方の泊まれるスペースなどにしたいということで、ワークショップでは改修にあたって必要なことを地元の大工さんたちと一緒に考えていきました。

 

【家主さんからの説明】

はじめに今回同席していただいた家主さんに、建物の入手から現在までの活用の経緯を説明していただきました。

普段岩村の他の地区に住む方ですが、「自分が幼少のころの賑わいを考えると、本通の物件が売りに出されるなんて、考えられないことだった」という言葉が印象的でした。

さらに、「うなぎの寝床」と呼ばれる町家だけに、奥に長く、普段から建物の半分は賃貸で居住されている方がいます。

今回はご厚意で居住スペースも見せていただくことができ、本通からでは全く想像のつかない、町家での暮らし方に、参加者一同驚いた様子でした。

なぜ岩村の町家から人がいなくなり、お店がなくなっていったのか、私たちのアクションによって何かを変えられるのか。ただ建物を直すのでなく、私たちの見据えるビジョンを形にしていくことが、このワークショップの目指すところであることを確認できました。

【天井板・壁板はがし】

まずは1階事務所奥のスペースがまだ手をつけておらず、全体に古めかしくなった天井板や壁板をはがし、痛んだところがないかを点検することに。

べきべきとバールを使って板をはがしていくと、薄い板にトタンが乗っただけの作りの屋根の構造が現れました。

屋根のトタンも亀裂が入ったりして、雨が入り込んでいたのが一目瞭然、補修が必要なことがわかりました。

しかし、古い建物の内部構造を見る機会は貴重で、地元で長年活躍されてきた大工さんによる解説に、参加者も関心を引き立てられた様子でした。

 

 

【屋根のペンキ塗り】

そのトタン屋根ですが、屋根のペンキを塗り替えてリフレッシュしたい、ということで、グループで分かれた参加者が屋根に乗ってペンキ塗りに挑戦。

指導にあたった建築士からは、下の板の痛みもあり、本来屋根ごと替えた方が良い段階、という診断もありましたが、ここでは応急処置にとどめました。

ペンキ塗り作業が初めてという参加者も多く、外で使うのに適したペンキの種類、薄め液の分量、効果的な塗り方など、建築士の指導のもと、作業をあたってもらったのと同時に、普段見る事のない、隣同士の屋根が重なりあい、不思議な空間を醸し出している「町家の裏側の風景」を楽しんでいました。

 

【障子張替え】

家主さん自らが表具屋さんとして活躍されてきたこともあり、2回の日に焼けた欄間の障子紙の張替え作業も行いました。

適切なのりの作り方や、きれいに貼るコツが伝授され、「自分の家の障子も何十年ぶりに張り替えてみようかな」という参加者も。

参加者一同、職人の技に魅せられていました。

  

【レクチャー・感想等】

ワークショップの最後に、参加者から建築に関するちょっとした疑問などに専門家が応える時間を作り、「町家の2階がふかふか揺れるのは、梁が細いから。天井が抜けたりするようなものではない」や、「町家は隙間の多い構造になっているので、結露することがない。結露はコンクリート構造の家ならではの現象。昔ながらの家は湿気の多い日本の気候に合った作りになっている。」など構造的なことから実用的なことまで、色々な専門的な話を聞く事ができました。

今回もワークショップ後に交流会を開き、参加者と町の人たちとのざっくばらんな話が交わされ、活動に込めている思いを共有することができました。

【まとめ】

今回は、片付けるだけでなく、建物の構造に手を付けるという、前回より作業的には少し進んだ内容となりました。

自分たちの手でむき出しにした梁や柱だけになった部屋を見て、これがどんな姿に変わっていくのか、その期待を膨らませるのには十分な変化でした。

自分たちのワークショップが少しずつ前進していってるのを実感すると同時に、今後はより具体的な「作る」作業への期待も感じられ、今後のメニュー作りにつながる1日となりました。

本通りから見える場所で作業を行っていたので、近隣の方も興味を持ってのぞきに来ていただき、中には「自分の家も手直しするつもりなんだけど、一緒にやれるかな」と話していただいた方もいらっしゃいました。

最後には、参加者の中から「町家で実際に暮らしている居住空間を見ることができて、『町家に住む』という今まで考えていなかったことが、魅力的に思えるようになった」という感想もあり、こうした取り組みを続けてきたことで、私たちの思いが少しずつでも届き始めている実感を持てて、活動の大きな励みとなりました。

【参加者感想】

  • 他の場所での古民家WS にも参加しているが、町家の再生ということで興味を持ってきた。町家も面白かった。
  • ペンキ塗りが初体験。こうした体験をしたかったので満足。
  • いろいろ話を聞いてみると移住の壁を感じる。自分で直したりすると、どのくらいの期間と時間がかかるのか。(←回答として、『自分がどこまでを住めるレベルとして考えるかで全く変わってくる。同じ伝建の建物を直した例としては1年半ぐらいかかってる。伝建地区や空き家バンクを利用する場合は、補助が出る場合がある。』)
  • 難しそうでもやってみると自分でできることがあるなぁと気がつかされ、できることを増やしていきたい。
  • 町家の利活用と、自分の活動をうまくつなげていくことができたらと思った。
  • 障子貼りをプロに教わることができたので楽しかった。
  • 自分の家の障子を張り替えてみる気になった。

 

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